マドンナリリーの花言葉

「彼は、うちよりも北にあるアンドロシュ子爵のご子息・エーリヒ様よ。継承戦争の英雄の家系だから、子爵家とはいえ、王家とのつながりは昔からあるはずだわ。もう四十も半ばくらいになるはずだけど……。末のご令嬢が十八だと言っていたから付き添いかしら」

「アンドロシュ子爵の?」


ローゼが過敏に反応するのを、エミーリアは不思議そうに見つめる。

まさかここでパウラ夫人の関係者に出会うとは……と、ローゼは内心で焦りだし、ディルクを視線で探した。
彼女からの視線に気づいたのか、ディルクは壁から背中を離し、ローゼのほうへと近づいてきた。


「どうした、ローゼ。なにかあったか?」

「ディルク様、あの……」


ローゼがディルクの腕をつかみ、エーリヒのほうを向いたその瞬間、エーリヒが先ほどよりも驚きを隠さずに目を見開いた。

そのときだ。

わあ、と会場内が歓声に包まれる。
入り口から、第二王子クラウスとベルンシュタイン伯爵子息のギュンターが入って来たのだ。


「やあ、皆さん、ようこそ。今日はこれから王家を支える皆様が友好を深める会になればと思っています。どうぞ無礼講で楽しんでいってください」


クラウスの挨拶に会場内が湧く。
そしてクラウスは、取り巻きが近づく中、するりと身をかわしてフリードのもとに向かい、和やかに話始める。一方ローゼたちのもとには、エーリヒが近付いてきていた。既に顔見知りであるエミーリアのほうに笑顔を向けてくる。

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