ハニー♡トースト


「父さん」


スッと私の前に朔弥の背中が現れる。社長の目線から逃れて、全身が一気に緩んだ。


「俺の意思で雇ってる。」


朔弥の有無を言わさぬ口調に、空気が凍ったのが分かった。全員の視線が、朔弥に集まる。


「…そうか。桜田さん、後でゆっくり話そう。随分朔弥と親しいみたいだからね。息子の話を聞かせてくれ」


優しそうな社長の笑顔には、もう温かさはひとかけらも残っていなかった。


「根本、食事にしようか。久々に親子でゆっくりと食べたい」


「は、はい、すぐに。」


その声に全員が各自の持ち場に戻り始める。

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