ハニー♡トースト
木製の重々しいドアをノックすると、「どうぞ」、と中から声がした。
「失礼します」
ガチャリ、と扉を開けると、社長は机で何やら書き物をしていた。
机の前に立つと、社長は持っていた万年筆をおいて、私に視線を向けた。温度の感じられないその目に、背筋がすっと冷たくなる。
「それで、どれくらい必要なんだ?」
「…え?」
「金が必要なんだろう?それで、ここで働いている。違うか?」
私は驚きすぎて、声が出なくなる。
「それとも地位か?息子の妻にでもなって、庶民から社長令嬢に?」
「違います!」
私は思わず叫ぶ。この人は何を言っているんだろう。
「私は、ただ…」
「朔弥に恋愛感情を抱いている」
社長の声に、何も言えなくなる。
そんな私を見て、社長は深いため息をついた。