唯少女論
彼女は、七月の風だった。



爽やかに吹き抜けて、私の心に棲《す》み着いた。



集団とすれ違う瞬間、その子の視線が私を捉える。



けれど周りの女の子が視線を遮った。



私は、立ち止まる。



彼女は、私の初恋だった。



私は、振り返る。



離れていく集団から抜け落ちるように、彼女が立っていた。



見つめ合うその瞳に私は思う。



ああ、彼女に違いない。



今は女らしく胸よりも長く伸びた黒髪も、あの頃の艶《つや》やかさを失ってはいない。



だから、私は君に名前をたずねる。



「あの、———アナタの名前は、何ですか?」
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