唯少女論
アタシ達の通う中学校は中高一貫の私立校で生徒数は多くないものの文武両道を掲げている中で、進学率も高く部活動も好成績を収めている部活が多かった。



取り分けアタシの所属している陸上部はインターハイに出るほどの優秀な部だった。



アタシ自身はスポーツ推薦がもらえたからでもあったけれど、何より制服がかわいいことがこの学校に入りたいと思った理由だった。



アタシ達のような学校が近いからとか推薦でとかの理由以外の生徒は裕福な家庭の子が多く、何かとそのことが気にかかる。



まだあと三年も我慢しなければならないのかと思うと少し気が滅入《めい》ってしまう。



それでも陸上部に入ってすぐに髪を切ってショートカットにした女のアタシに同じクラスの一番お金持ちの女子生徒が告白してきたことは少なからずアタシに優越感を与えていた。



何だか、勝った気がしていたのだ。



ウチはそんなに金持ちでもない。



かといって貧乏だというわけでもない。



いわば普通だ。



けれど、普通って何だろうか。



ごく平均的?



何の特色もない?



それは何もないということに遠くて近いんじゃないだろうか。



アタシは普通で、何もない。



「———最中さん。最中唯理さん」



ぐるぐると回る思考を止める担任の声が聞こえた。



「………あ、はい」



「聞いてた? 卒業アルバムの係り、お願いできる?」



「はい。わかりました」



と簡単に返事をしてしまったことを少しだけ後悔した。



「じゃあ、桜木さんと一緒によろしくね」



「え………?」



そう言われて彼女を見るといつものように軽く頭を下げた。
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