繋がる〜月の石の奇跡〜
そして昼休み、お弁当を持ってきていなかったので、あずさとえみはカフェテリアに行って食事をすることにした。

このキャンパスは、工学部と医学部の二つの学部が共存している。

医学部の生徒は1年から6年までこのキャンパスで過ごすが、工学部は、3年と4年だけ、このキャンパスに通うことになる。

そのため、後から来た工学部の生徒たちは、どことなく肩身の狭い思いをしていた。

1,2年を過ごしたキャンパスには、教育学部や文学部の可愛らしい女性がたくさんいたからか、工学部の男子も身だしなみに気を使っていたようだったけど、このキャンパスは圧倒的に男子の割合が高かった。

『なるほど。』
男子たちの身だしなみに変化があった理由がここではっきりとした。

カフェテリアは医学部の建物の近くにある。

そのため、基本的に工学部の生徒よりも医学部の生徒の方が利用率が高い。

一目見ただけで、医学部生か工学部生かはなんとなく予想がつく。

カフェテリアに入ると、ざっと見積もって7:3の割合で医学部生が多かった。

えみは、今日のAランチメニュー、デミグラスハンバーグランチを頼んだ。

このキャンパスのカフェテリアのランチ定食は、スープとサラダが付いて380円。

味もボリュームもなかなかイケると評判だった。

あずさとえみが空いてる席を探しながらあたりを見渡していると、えみは一人の男の子と目があった。

もう一度、その男の子を見てみると、こちらは見ていなかった。
『気のせいだったのかな。』

すると、後ろの方から、

「圭くん!」
と、トーンの高い可愛らしい声が聞こえてきた。

パッと振り返って見てみると、上品な栗毛色の綺麗に巻かれたヘアスタイルの女の子が立っていた。

その子は、上から下まで高そうな洋服を着ている。

『医学部の生徒だ。』

その子は、えみとあずさの横をすっと通り過ぎ、まっしぐらにある男の子の方へ向かっていく。

横を通った瞬間なんとも甘い優しい香りがした。

『あ。さっき目があった気がした男の子。』
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