真夏の青空、さかさまにして
佐川サンと仁美サンは「吉弘くんにさん付けされるのってなんか変な感じだな」とはにかんでいたけれど、一応運動部ではあったから、基本年上の人にはサン付けしないと落ち着かない。もちろんタメ口なんて言語道断だ。
「一年生が三人、二年生が一人、三年生が二人ですか……。部員数、少ないんですね」
どの風呂に行ってもついてくる剣道部の人たちをもうほとんど諦めたところで、思っていたことがぽろりと口からこぼれた。
佐川サンが「そうなんだよなー」と唇を尖らせる。
「バスケやサッカーみたいにポピュラーじゃないから剣道やってる人自体あんまりいないし、そもそもうちの学校がそんなに部活に力入れてないんだよ」
「へえー、そうなんですか」
まあたしかに、うちの学校も他の部活に比べれば部員数は少なかった。
でもポピュラーじゃない、とは少し違うかもしれない。剣道って実は競技人口自体はものすごく多いんだ。だけど競技者の年代が小学生にもなっていない幼い子から還暦を過ぎたシニア世代まで様々だから、なかなか高校の部活なんかでは人数が集まらない。
それに比べ、バスケやサッカーなんかは若者のスポーツって感じだし、中高では人気の部活だろう。
「吉弘くんは城北だよな、高校も」
「まあ、はい」
「城北って言ったら、中学でも高校でもスポーツの強豪私立だよなあ。普通科の偏差値もバカみたいに高いし、俺なんかには程遠い世界って感じだわ」
「そんなことないですよ、勉強もスポーツもできなくてお金積んで入ったヤツもいるでしょーし」