真夏の青空、さかさまにして
「よっ、さすがです〜!女子力!」
仁美サンと分担して野菜を切っていると、真夏が茶化しにきた。女子力、という言葉に僕はぴくりと反応する。
「カレーライスくらい作れないのおかしくない?」
「うっ……」
「僕、女子力って言葉大っ嫌いなんだよね。普通に生きる上で必要なことなんだから、女子力じゃなくて生活力だよね?できて当たり前だよね?人として普通にできなきゃいけないことじゃなくない?」
「あれーおかしいな、急に耳の調子が……」
参ったというようにして、真夏が耳を押さえながら逃げて行く。僕はその後ろ姿にべえっと舌を出して、ざまあみろ、と笑う。
すると、僕のとなりで仁美サンがクスクスと小さく笑った。
「山下と仲良いんだね」
「はあ、良くないですけど……」
「そうなの?」
「そうですよ、どちらかというと仲悪い方だと思うんですけど」
真夏といると仲が良いんだねとよく声をかけられる。その度に僕は不思議に思うし、強く否定をする。
だって、仲が良いってなんだろう。
僕と真夏が一緒にいる時はたいてい真夏がひとりで喋っているが、僕はそれの相手を極力しないし、本当に一方的な会話だ。真夏の天然ボケが炸裂しても僕は突っ込んだりしないし、本当にたまらなくなった時に少し反論をする程度だ。
それを見て仲が良いって……やっぱりおかしな話だと思う。
僕は特別親しい友達なんていないからよくわからないけれど、仲が良いってたぶんこんなのじゃないはずだ。そんな関係とは程遠いと思う。