真夏の青空、さかさまにして
それからすべて用意し終えて朝のニュースを見ている時間はなんだかいつもより静かで、やっぱり少しだけ暇だった。
「ただいま〜!」
「あっつ……」
「わあ、いいにおい!」
口々に言いながら部員たちが帰宅して、リビングはまた騒がしくなる。
ご飯をよそっていると、顔を洗ってきたばかりらしい真夏がぶるぶると水気を払いながら僕のところへやってきた。気持ち良さそうな顔をして……犬みたいだ。
「ねえ、すっごい美味しそうなんだけど!玉子ふわっふわ!あずさってなんでもできるんだねえ〜!」
「いやこれくらい普通だから」
「そんなことないよ!ありがとう、あずさ」
真夏が目を細めてふわりと笑って。
その瞬間、僕は何故だか落ち着かない気持ちになる。思わず真夏の頭を撫で繰り回したくなるような、そんな衝動が僕の中を駆け巡った。
「……どういたしまして」
なんだか今とてつもなく気持ち悪い顔をしているような気がして、僕はふいと顔を逸らした。すると、そんな僕を見て真夏が「エッ」と間抜けな声を上げる。
なにか変なこと言ったっけ。不思議に思いながらちらりと見れば、口に手を当てた真夏がそれはそれは嬉しそうな顔をして僕を見つめていた。
「あ、あずさが笑ったーっ‼︎」
「……は?いや、今までも笑ってたでしょ」
「あんな嫌味な笑い方、笑ってるって認めないよ」
……ああそうかい。嫌味な笑い方で悪かったね。