こっち向いて笑って、先輩!
*
「飯田!」
放課後、腕に大きめの絆創膏をした飯田を下駄箱で呼び止める。
「っ、来原。……お前放課後ダンスの居残りだろ。さっき名前呼ばれてたぞ」
「なんで、真壁くんと喧嘩したの?」
腕の傷を見つめながらそう聞く。
きっと、掴みあった拍子に地面に転んで擦りむいてしまったんだろう。
「別に、喧嘩っていうほどでもないけど。真壁のやり方に俺が文句言っただけ」
「っ、嘘だ……飯田は喧嘩とかしないじゃん!」
「来原の俺のイメージがどうなのか知らないけど、別に気に入らないことがあったら普通に言うよ」
やっぱり不自然だ。
飯田が嘘をついているのはわかるけど、本当のことは何が隠されているのかわからない。
「……っ」
「じゃあ、俺部活だから」
飯田はそう言って、靴箱を後にした。