こっち向いて笑って、先輩!
体育館の裏に着くと、真壁くんが誰もいないことを確認するかのようにあたりを見渡した。
あぁ、絶対怒られる。殴られるんじゃないか?だから人がいないことを確認して!
「あっ、あのさ、来原────」
「ご、ごめんなさいっっ!」
これ以上はないってくらい声を張って、私は大きく腰を曲げて全力で謝る。
「えっ?」
「もともと遅いくせに、本番に転んで、みんなの足引っ張って、真壁くんにあんなに走らせてしまって!本当にごめんなさいっ!すごく反省してる!だから、どうか殴らないで……!」
「殴る……?……ぷっ、ハハハハハっ!」
「へ?」
思わず顔をあげると、真壁くんがお腹を抱えて笑っていた。なんだこれ。何が起こっているんだ。なぜ笑ってるんだ真壁くん。