こっち向いて笑って、先輩!
「き、如月先輩!」
「なんで驚くんだよ。お前が呼んだんだろう」
少し不機嫌そうに眉をひそめるけど、やっぱり、その瞳も唇も全部、相変わらずイケメンで。息をするのを忘れそうになる。
「あ、そうですよね。すみません。あの、先日は……」
「ここ人の出入り多いから、移動するよ」
「へっ、」
如月先輩はそういうと、私の横を通りすぎて廊下を出た。
しつこいと言われない範囲で、と思ってさっさとカーディガンを返すつもりだったのに意外な展開にびっくりして慌てて先輩の後を追う。
置いていかれているようで、絶対いなくならない背中を見る限り、先輩がちゃんと私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれていることがわかる。
先輩についていくと、さっき上ったばかりの階段のすぐ上の階段を先輩が上った。
この階にも教室が他にも続いているらしいけど『立ち入り禁止』の張り紙とカラーコーンが並べられていた。
昔はこの学校も有名なマンモス校だったけど少子化が進んで、使われなくなった教室がたくさんあってこの階もその1つらしい。