社長、僭越ながら申し上げます!
驚くほど寝心地の良いマットレスのベッドで
短い時間だったがぐっすり眠れば…

「あぁ、何だか気分も晴れやか!」

思わず部屋の窓辺で叫んでしまう

専用の部屋には小さな洗面台とトイレまで付いていて
リビングは共通だから、リビングに出る前に身支度を整えてしまおう

(しかし…いいのかな…)

着替えてリビングに出ると湊さんが部屋着のままボーッとソファーに腰かけて窓の外を見ていた

「…おはようございます…」

私が恐る恐る声を掛けると湊さんがくるりとこちらを見た

「……」

「湊さん?」

(どうしたのかな…)

一瞬、下を向いた湊さんが
顔をあげて私を真っ直ぐに見て笑った

まるで花が開くような華やかな笑顔に思わず
顔が強張ってしまう

(う…い、イケメン過ぎる…)

「おはよう、乃菊…」

「はひ…み、なとさん…」

「随分早いね…まだ6時前だよ?」

(湊さんこそ…早いじゃないですか…)

「はい……朝やることがありますし…」

リビングを横切り自由にしていいと言われたキッチンに向かう

冷蔵庫を開けてみると中身は何もない

(お米と卵と牛乳、小麦粉と調味料と……買っておくかな)

「自由に買い揃えていいから」

コトンとカウンターに置かれたのはクレジットカード

「は?いや、社長それはいかがなものかと…」

「なぜ?」

「私が勝手にブランド品とか買い漁ったらどうするんですか?」

「乃菊は買わないよ」

(確かに買いませんけれども)

「ですが……」

「乃菊は堅実な子だし、買い漁ったらなんて考えてない。
それにもし……乃菊が買い漁っても限度額低めに設定してあるから大して使えないよ」

湊さんはカードを今度は私に握らせた

「はい…」

「ちなみに幾らが限度額で…」

「ん?300万かな……大して買えないでしょ?」

「充分です!」

(私のカードは30万です!10倍ですから!)

「だから気にせず使ってよ」

ウォーターサーバーから水を出して飲みながら
湊さんがキッチンから出ていった

(いちいち感じる生活の差…)

住まわせて頂くだけで有難いから

握らされたカードは部屋の棚に入れ、自分の財布で食材を買おうと決めた


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