社長、僭越ながら申し上げます!
秘書のオシゴト
…と、言うわけで

頭が真っ白になりながら
高級マンションの最上階に連れていかれ

行った先はワンフロアぶち抜きタイプの家

エレベーターも高層階専用だった


湊さんの綺麗な長い指がパチンと指を鳴らすと
暗い部屋に灯りがついていく

「電気がついた!魔法…」

「いやいや、手を叩くと反応するんだよ」

(へー!)

リビングを見回すと

広い部屋には殆ど家具がなくてすっきりしていて

大きな窓からは街の灯りが煌めいている

「うわぁ…綺麗」

「…フフ…可愛いなぁ乃菊は…」

窓辺で見とれているとジャケットを脱いでYシャツ姿になった湊さんが私を手招きした

「ここは今日から乃菊の家だし…こっちは乃菊専用の部屋にするから、好きに使って」

(私の部屋?…)

リビングの隣の扉の奥には一部屋あり
そこには既に着替えなどが用意されていた

(い、いつの間に……)

「あ…あの…何故、家まで?」

社長秘書になったとは言ったって
そこまでして貰える筈がない

それなのに湊さんは眉を顰めながら
私が思ってもいなかった事を話し出した

「だって…今までの所じゃセキュリティが心配だからさぁ…先日もお隣が空き巣に入られたでしょ?」


「なぜ、それを?」

確かについ3日前にお隣に空き巣が入ったらしく
怖いなとは思っていた所…今日は我が家だった

「乃菊の事はみんな把握したいからね」

湊さんが艶やかに笑う

「そんなわけで、今日からここに住みなさい」

「湊さんあの……」

「どうした?」

こんな凄い場所に住まわせて頂くなんて…

「とても有難いんですが…私では微々たる金額しかお支払できないのですが……」

前に払っていた家賃でも厳しかったのだ
とてもじゃないが払える気がしない

「要らないよそんなもの……君はここに住んでオレの傍で仕事をすればいい」

「そんな訳には行きません!そこはきっちり…ぶ、分割でお支払いします!」

(私だって社会人だ、キチンとしたい)

湊さんは暫し考えてから…パチンと指を鳴らした

「よし!じゃあ家賃代わりに…週末にはご飯つくってよ」

「え…週末だけ?」

「オレ毎日帰りが不規則だからね…その代わり仕事がない限り週末は家から出ないから3食出前取ってるんだけど…それを乃菊が作ってよ」

(3食出前…どんな生活よ…)

「分かりました…きっちり作らせていただきます」

「楽しみにしてるよ!」

「ぜ、善処します…」

そんなに料理は得意じゃあなかったけど、自炊は一応しているし、やろう!と決めた




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