社長、僭越ながら申し上げます!
「旨そうに飲むなぁ……自社製品」

儀一さんは嫌みのように言うけれど
缶珈琲でも、本当にイチダの珈琲は美味しいのだ

「入社する前から好きなんです」

「へぇお前さ、自分はブスだって本気で思ってる?」

「はい」

容姿を誉められたことは
両親に言われる以外はない

醜いとまでは思わないけれど
お世辞でも可愛くない

それくらいの自覚はあるのだ

「勿体無いな…絶世の美女とは言わねーし
社内1の美女にも程遠いけど……愛嬌ある顔してるよ」

(自分でブスって…言ったくせに…)

「だからあんまり卑下すんなよ」

元気がないのをそのせいだと思っているのか
妙に優しい儀一さん

「容姿についてはあまり悩んでいませんから
大丈夫ですよ?儀一さん」

「そっか、ならいいよな。ブスのが気楽じゃねーか?
変な男とか寄って来ないし…」

儀一さんはどうやら本当は優しい人なのかもしれない

「そもそも男の人が寄って来ませんよ」

「そーでもないんじゃね?物好きも…居るよ」

意味深に儀一さんが呟くと

向こうから見慣れたシルエットが見えた

「ほら、来た物好きが……じゃあな」

その姿を捉えると儀一さんはスッと立ち上がり、オフィスの方に戻っていく

「え、あ、儀一さん!」

「さっさと、仲直りしろ!ブス!」

(そう言われても……喧嘩したわけではないし…)

近づいてきたシルエットは…私の前に立った

「探したよ、乃菊」

「湊さん…どうして?」

「好きだからに決まってる…」

優しく私の背中に腕を回すと身体を引き寄せた

「だって…湊さんは、カエさんが…」

「は?カエがどうかした?」

湊さんは心底不思議そうな顔をした

「もう帰ったよ…話になんないんだよあの人…」

頭を掻きながらブツブツ湊さんは言う


「そ、そんな言い方をしなくても…好きな方なんでしょ?」

「…なんか、乃菊誤解してない?」

「カエさんと入籍するとか…なんとか…」

小さな声でそう聞くと
湊さんが何かに気付いて指をならした

「あ、そっか…違う、違うよ?
大体乃菊が好きなのに、なんで?誤解するの?」

「え?え?」

「あの人、カエはオレの母親
…18で産んでるから若いんだよね…若作りだし。
とっくに離婚してるのに、ずーっと
オレに自分の戸籍に入れって言ってんの。
もう30なんだし意味ないって言ってるのに
…いやはやお嬢様は訳わからないよ」

あんな美女がお母さん?



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