気まぐれ猫くんの手懐け方
猫くんの白くて綺麗な手が、私の前髪に触れた。
そっと優しくゴムをほどいて、かわりに自分のピンで私の前髪を慣れた手つきで留めてくれる猫くん。
「うん、かわいい」
そう言いながら微笑んでくれた猫くんの前髪は下ろされていて。
長い前髪が、その大きな目を少し隠してしまっていた。
けど、普段見慣れない猫くんの姿にドキドキしてしまって。
「猫くん、前髪下ろすとかっこいい……」
思わずその一言をぽろっとこぼせば。
「ケンカ売ってる?」
「え」
猫くんは、すっと私に向かって手を伸ばしてきた。
「『いつも』でしょ?バカ陽愛」
「……っ」
「何してんの、行くよ?」
その言葉を合図に、私は猫くんの手を取った。
そうして私と猫くんは、花火大会の会場の中へと向かった。