ねぇ、顔を見せてよ
行ってみたら

(な、な、なんで!!)

河野くんと紅子が楽しそうに向かい合わせに座って談笑していた

オレ以外の男に可愛い顔を綻ばせている紅子を見て

(なんか面白くない!!)

柄にもなく嫉妬してしまい
窓ガラスに張り付くようにしてから電話を掛けた


「なんで河野くんと居るんだよ!オレとのデート断っといて!!」

『え?』

ビックリしてキョロキョロとした紅子が
お店のガラスに張り付いたオレに気づいて叫んだ

「ああぁぁぁ!!」

「わっ!フッシー!なにしてんだ?!」





「お、お、お早う……巧くん…」

クスクス笑いながら開けてくれた嵯峨さんに
頭を下げてテーブルに近づくと
紅子がプルプル震えながらオレを見上げた

「お早う紅子……河野くん…」

「お早うフッシー!」

河野くんはいつも通り目付きが悪いくせに
なんだかデレデレして見えた

気に食わなくて睨むように見ていたらしく…
河野くんはあきれたように呟いた

「そんなに噛みつきそうな顔で見んなよ…
紅子ちゃんと紗由理がたまたま友だちになってただけ
オレは紗由理に会いに来たの」

「紗由理?さん……」

「おー、オレの彼女だから」

そう言えばオレが紅子に夢中になった辺りで
河野くんに彼女が出来たとかできないとか連絡があったような?

「そう!巧くん!!
紗由理さんと河野さんは素敵な青い糸で結ばれてるの!!」

紅子はブルーグレーの瞳をキラキラさせてオレに力説した

「へぇ…」

(赤じゃなくて青?)

すると河野くんが恥ずかしそうに
そして、心底嬉しそうに頭を掻いた

「紅子ちゃん……ホントに純粋で可愛いよな…
有り難う……」

その表情を見て……何やらワケありなのかもしれないと
オレはそれ以上聞かなかった

「巧くんそういえば随分早く来てくれたのね?」

「うん、早く紅子に会いたくて…」

「……て、て、照れます!」

(ホントに可愛いなぁ)

「食べ終わったら支度しておいで?」

「うん!!」

バタバタと紅子が2階に上がって行くと
河野くんがカップを口にあてがいながらぼそりと呟いた

「フッシー……あんまり束縛すると紅子ちゃん
逃げちゃうぞ?」

「……気を付ける……なんかつい、ね…」

思わず本音を漏らすと河野くんはニヤリと
悪そうな顔になる

「あの子ならフッシーのテクニックでメロメロだろ?」

「……下世話!…それがさ?意外とオレが溺れてんのよ」

「それはわかる」

河野くんはしれっと答えた

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