七瀬クンとの恋愛事情
「愁士くん、彼女さんに何も話してないのね」
扉の向こう側から彼女の呆れたようなそんな声が聞こえた
また、二人の間にしか分からない会話だ
「だから、私には関係ないからっ」
「誤解だって倫子さんっ!」
何を根拠にそう言うのか
「誤解って、こないだ駅前のファミレスにいたなんて嘘ついたくせにっ」
「あ…え、だっだからそれは………っ」
「いいからもう、離して」
それでもお互い扉の押し問答は続く
「とにかく聞いて倫子さんっ、俺が今日してきた用事は………」
「全部彼女さんのためじゃない〜」
七瀬くんの扉を掴む腕の下から、私を覗き込むように顔を出して声を弾ませる小田さん
「愁士くんが私のお願い聞いてうちで脱いだのも………っムグッ」
「あなたは黙ってて、ややこしくなるからっ」
喋りだす小田さんの顔を片手で押さえ、後ろへと追いだした
「なによ、私のせいで脱いだって……それ」
結局そっちですることしてるじゃないっ!!
このチャラ男が、よりにもよって隣の部屋で……
そのあと嘘までついてうちに泊まって
だいたい
そもそもその日古坂さんとだって………
「だからそれは俺が勝手に、どうしても何とかしたかったから…待って、ちゃんと始めから話すからっ」
いつまでも続く扉の押し問答に、私の力もそろそろ限界だった
すでに私はほとんど玄関のノブを両手で持つだけで、七瀬くんは身体の半分が入った状態で私を見下ろしている