七瀬クンとの恋愛事情
そう言って彼女は目を細め、綻ぶような笑顔を見せる
「七瀬までそんな風に言われたくないでしょ?
だ・か・ら主任は、ただ七瀬と別れてくれればいいだけですから」
「古坂さん、あなた何言ってるか分かってるの?」
私と七瀬くんの間にそんな取り引きなんてするわけがない
彼女が七瀬くんを好きならそんなことわかってるはずなのに
「分かってないのは松原主任の方ですよ。安心して下さい、七瀬が彼女と続かないのは今に始まった事でもないし、前に私が七瀬に振られた理由、知ってます?」
「…本当の理由?」
「『真面目に社内恋愛なんかするつもりないから』って言われたんです」
「え、」
確かに私が目撃した給湯室での古坂さんの告白に対する七瀬くんの答えに、そんなニュアンスの言葉があった
「その意味分かりますよね。要するに今主任は七瀬に遊ばれてるってことです。言っときますが、七瀬と遊びで付き合ってるのが自分だけだと思わないで下さい」
そう言って、目を細めニッコリと微笑する古坂さん
あの時見た二人のキスシーンが頭を過ぎる
「とにかく、別れたらちゃんとこの写メは消してあげます」
「………………」
「一体どんな手を使ったのか知りませんけど、私に七瀬を返してくださいっ」
食べ終えた古坂さんは、私を見据えゆっくりと席を立ちながらそう言って先に店を出て行った
彼女のピンっと伸びた後ろ姿を見送りながら、テーブルにはいつまでも手をつけられない私のパンケーキだけが残った