七瀬クンとの恋愛事情
「やだなぁ……泣いてないですよ」
つらい事なんてない
「倫ちゃん……」
七瀬くんとの恋愛も、初めからそんなに長くは続かないってわかってたし
昔みたいに、また無かった事にすればいい
そうすれば彼が困る事はない
きっと七瀬くんはこれから普通に20代を楽しく謳歌していって
彼にお似合いの、歳相応な子と恋愛をして
私との一時の恋愛なんてすぐに忘れてしまう
「この前言った花菱に一緒に来る事は?」
そう言う課長に、私はゆっくり頭を横に振った
「有難い話なんですが、私には……会社にも生活にも結構満足してますから」
これ以上課長に甘えてはいけない
その話が本来花菱からの申し出でない事は、さすがに私にもわかる
「そっか…」
「課長はやっぱり花菱に?」
何気にそう聞くと、少し間を取るように食事に箸をつけ、残っているコップのビールを飲み干した
ひと息つくとこちらをジッと見据えてきた
「ああ、行くよ。もう上には話してある。でもまだやらなきゃいけない事もあるからね、他の得意先への繋がりをもっと強化して引き継がないと、それに……」
ああ、やっぱりこの人らしいや
人思いで、面倒見がよくて
常に先を、前に進んで行ける人なんだ
「だからその間、倫ちゃんの気を向かせる期間ってことで、よろしくな」
「…………っ」
「転んでもなかなか起きない、案外としぶとい性格なもんでな」
そう言ってくれたのに……
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