七瀬クンとの恋愛事情


結局この間ずっと守られていたのに、その気持ちに応えられず

まるで恩を仇で返すかたちになってしまったのが申し訳ない





ゆっくりと歩いた先に駅が見えて来ると、路地も明るくなって疎らな人たちが同じ方向へと流れていく中


「この辺でいいですよ、きっとみんな課長を探してますって」

そう言って足を止め、抜けてきた送別会場へと戻るようにと、課長を見上げた


「倫ちゃん、今日あいつが……」

「?」


見上げた課長の視線が少し泳ぎながら口を濁す


「いや……いい、そうだな。ここで」


「はい、ありがとうございました。これからのご活躍を…ぉ…っ!」


いつも髪をくしゃくしゃにするほどの大きな手が
ゆっくりと頭を通り越して背中にまわり

引き寄せられながら課長の腕の中に収められた


「っ、かちょ…お?」

まるで泣いた子を扱うように頭の後ろ側から軽くポンポンとされ


「もう自分を抑えなくてもきっと大丈夫だから…」

「……え?」


そのまま、私の頭の上で盛大にな溜め息をついた


「さっき泣いてたろう。また七瀬と何かあったんだろうけど、本当に欲がないな倫ちゃんは。俺にしとけばよかったのに」

「……………っ」


抱きしめられてるというか、あやされているこの状態でそう言われる


「.……私も、そう思います」

胸の中に収まっていながら、私の両手はその気持ちを受け入れることができないと、頭を項垂れ手で胸を軽く押して距離をとった
< 335 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop