七瀬クンとの恋愛事情
「きっと後悔するかもよ、逃した魚は大きかったって」
私の頭に乗った大きくて優しいその手は、またいつものようにくしゃくしゃと下を向く髪を掻き上げる
「本当、そうかも……でも」
一緒にいてくれていたのに、いつまでも住み着いて離れていかなかった存在が
穴が空いたようにずっと吹っ切れないままだ
本当に課長の言う通り欲がない
世の中の幸せな人たちはきっともっと上手く立ち回っているんだろうに
「もう助けてやれないんだからな」
離れていくその大きな手を見送った
「はい」
「……じゃ、行くわ」
「本当に、ありがとうございました」
深々と頭を下げたまま上げられない
身体を翻し、遠ざかっていく高科課長の足音を聞きながらその背中を暫く見送った