七瀬クンとの恋愛事情
「松原主任…っ」
彼がここ(給湯室)に私を追ってくるって、わかっててワザと会議室を出た
「あの、さっきのは別に何かしてた訳じゃなくて…」
会議室の扉を開けた時は、一瞬彼女との距離の近さに驚いたけど、少し前から話に聞き耳をたてていたから彼女から七瀬くんに近付いていたのは当然わかっていた
「倫子さん……?」
それなのに、きっと私が咄嗟に誤解して怒ってるんじゃないかと彼に思わせているあたりズルいやり方だ
そのまま背をむけて用意する湯呑みを数えながら何気に手を止めた
給湯室の外から見ても私が隠れるくらい、後ろから少し屈んで近付いた七瀬くんは、
ちょっと焦ったように身体を傾けて私に話しかける
「……休憩の後デスクに戻った時に『至急会議室へ』なんて付箋があって、行ってみたらあの子が待ってたんだけど……誘われたって勿論行かないし、今度会ったらちゃんとはっきり断っるし……だからっ」
「………ごめん、七瀬くん」
「え…」
そのままクルっと向を変えて七瀬くんと向き合った私
「……扉の前で名取さんと聞いてたの『古坂さんの後釜でいい』ってあたりから」
だから七瀬くんに何もやましいことなんて無いのもわかってる
「大丈夫、ちゃんと分かってるから」
6歳も年上で上司なんだから、小さい事いちいち気にしていられない
「ちゃんと七瀬くんを信じてるから。逆にこれからこうゆう事がよくあるからって名取さんにも言われてるし、怒ったりなんてしないわよ」