七瀬クンとの恋愛事情

「七瀬なら下のドリンクコーナーにある観葉植物の裏でしばらく潜んでるってよ」

急に現れて目の前からそう言われ、あまりの近さに思わず退けぞった


「わっ?!え?」


「いきなりそんな事わざわざ俺に言って行くからなんだ?とか思ったが、勝手に人を伝言係に使いやがって」

私にぶつくさと不機嫌そうにそう言う脇谷くん

会議の後、上司とはいえ感の良い脇谷主任ならたぶん状況を察して私に伝えてくれると踏んだのだろう


「ごめん、ありがとう」


急いでワンフロア下の階に向かった

きっと定時帰りの波の中で藤間さんから少し身を隠すつもりなのだろう

企画課の中で、もしさっきの調子で誘われたら周りに勘違いされてもおかしくない
だからわざわさ空き会議室の多いフロアで待機しているんだ



「七瀬くん?」

言われた通りの場所で隠れる様に自販機のコーヒーを飲みながら長い脚だけが放り出されていた


「しっ」

人差し指を口元に立て、観葉植物で隠れた七瀬くんの座る長椅子の更に奥のとなりにおいでと促される



「遅くなりそう?」

「いや、そうでもないよ」



座ったもののしばらくそこを動く様子もなくコーヒーを啜る

「私が来るってわかってたの?」

脇谷くんへの伝言は明らかに私へのものだ

「倫子さんはきっと気にしてると思って」

そう言ってクスッと口角があがる

「きっ、気にしてなんて…….」



「どうした?こんな所で何やってるの、藤間っちィ」
< 371 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop