七瀬クンとの恋愛事情
そのまま密着した体勢で、ゾクッと肩が上がる
コピー室はフロアー内の一画奥まった場所のため、覗き込まないと中の様子は見られない
仕事をしているデスクからは死角になる場所だ
「残業手伝うから………今日も部屋に行っていい?」
耳元で、甘い低音の悪魔の囁きが
って、えっ………?
聞き間違いだろうか、それとも新たな罰ゲームとか?
「な、何言ってんのっ、昨日の事なら気にしないでちゃんとなかった事に………」
「なかった事って? なんで?」
いくらフロアーの隅だからって、声が聞こえない場所じゃない
極力小声で話していたつもりなのに、彼の予想外の行動に思わず声を上げた
「なんでって七瀬くんが言ったんじゃないっ」
『なんか(こんな事になって)ごめん』って
「だから………っ」
コピー機に挟まれていた七瀬くんの手が、なぜか瞬間に離れ、私との間が開いた
「どおした?」
入り口から顔を覗かせたのは高科課長だ
「主任、一体この単純なコピー機のどの操作したらこんな状態になるんですか?」
「は、え?」
いきなり口調も表情も変わった七瀬くんの視線の先にあるコピー機が、
シッタン、シッタンと何もコピーされてない用紙が排出口から止めどなく出続けていた