ヒミツにふれて、ふれさせて。
「じゃあ、20日の夜は、6時に鎌倉駅集合で!俺の家、そこから歩いて行けるから」
「はーい」
課題を職員室へ持って行ってくる!と、大急ぎで教室を出て行く近海くんを確認しながら、わたしはスケジュール帳に予定を書き込んだ。
…まさか、珠理の誕生日を書くことになるとは、思いもしなかったよ。
パタン…と、スケジュール帳を閉じると、間も無くして、部活の時間で人が少なくなった教室に、長身の影が現れる。
「あれ?めごと瀬名ちゃん。なんでこんなとこに…」
…珠理だ。どこかに行ってきたのかな。
そういえば、今日は初めて会う。
「めーごっ。わたし、これから部活に顔出してくるねっ♩」
「ええっ」
珠理の姿を見て、何を思ったのか、瀬名はそそくさと教室を出て行こうとする。
何を言ってんだ!瀬名が入ってる美術部は、今日お休みの日でしょうが!嘘つき!
そんなことも言えずに、口をパクパクさせていると、「ミノくんもまたね」と言って、教室を出て行ってしまった。
…取り残された、わたしと珠理。
「…近海と、何の話をしてたの?」
机に座って動かずに固まっているわたしの隣に、珠理は座った。…というか、そこが珠理の席だったのか…。たまたま隣に座ってたんだな、わたし。
「…いや、別に、大したことではなくてですね…」
「アタシの誕生日のことね」
「うっ…」
やばい。ソッコーでバレた。バレてますよ、近海くん!
どう答えたらいいのか分からなくて、何も言い返せずにいると、珠理は笑いながら「毎年のことだから、もう分かるわよ」と言っていた。