ヒミツにふれて、ふれさせて。
「今年は、めごも来てくれるんだ♩嬉しいわ〜」
「……」
ふふふ♩と、ご機嫌よく笑う珠理。その喜びに、素直に反応できなくなったわたし。
「た、誕生日プレゼントとか、何が欲しいの…?」
話題が見つからなくて、とりあえずこんなことを聞いてみる。
「え?誕生日プレゼントなら、この間もらったじゃない。このマフラー」
「…っ」
珠理は、カバンからわざわざそれを取り出して、首に巻いてみせた。わたしの方を向いて、ニッと唇を上げる。その瞬間に、この間のことが思い出されて、また恥ずかしくなってきて。
「そっ、それはいつもお世話になってたからあげたんでしょ…っ。それとは、別に!だよ!」
…そしてまた、こんな可愛くない反論をしてしまう。でも、それは本当だし。たまたま、誕生日だからってことで、買うための背中を押してもらっただけだし。
だから別に、珠理がほかに欲しいものがあるなら、全然準備するよってことなのに。
「とにかく!あと少ししか日にちないんだから、欲しいものがあったらちゃんと教えてよね!じゃないと手ブラになっちゃうから」
「…」
そんなこと言って、珠理の方を見れずに、足先をもじもじと動かす。手首の桜貝に映ったわたしの顔は、ひどく困った表情をしていた。
何も言ってこない珠理の方を向けなくて、下を向いて静かに待つ。
すると、長い影が伸びてきて、わたしの乾燥した髪に、大きな手が優しく触れた。