ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…!」

ふにふにと、わたしの綺麗でもないパサついた髪に触れる珠理。
…ほんと、この人、髪の毛好きだよね。

何かを思うようにボーッとわたしの方を見る珠理に、「なに?」と聞く。

するとその指は、わたしの頰にもほんの少しだけ触れて、名残押しそうに、離れていった。

伸びた手を戻して、珠理は机に突っ伏して。
しばらく何かを考えていたようだけれど、右腕を立てて、顔だけわたしの方に向ける。


そのひとつひとつの動きもきれいで、思わず見惚れそうになっていると、こちらを向いたきれいな目と唇は、わたしを捉えていた。




「…じゃあ、めごがほしい」




…そして、そう、静かに呟かれる。

一瞬、言葉の意味が分からなくて、「え?」と聞き直したくなったけれど、机にもたれかかっていた大きな身体は、グイッと椅子ごと移動して、わたしの、すぐ隣まで接近していた。


「じゃあ、めごをちょうだい」

「〜〜っ」


耳元で、囁かれる言葉。その言葉を脳までもが感じ取って、足先から頭のてっぺんまで、カッと熱が上がっていく。


「な…っ、何言ってんの…。ふざけすぎだよ…っ」


なんてこと言ってるの。バカじゃないの、こんなところで。冗談にもほどがある。

近くに迫っている珠理からの言葉は、あまりにも身体を熱くさせるから、それを取り払うようにキュッと目を閉じた。

それを見ていたのか、しばらくすると珠理は、ふっと吹き出していた。


「な…っ、何笑ってるの!?」


自分があんなこと言っといて、笑うなんてひどい!
そう言いながら、すぐ近くにある巨体の肩を、げんこつで軽く殴ってやった。

こっちは本気で恥ずかしかってのに!ばか!ばかオネェ!



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