ヒミツにふれて、ふれさせて。
それでも、そんな抵抗は虚しく、その手も、さらに大きな珠理の手に捕まえられてしまう。
きゅっとしまる手首に、また心臓が動いたと思ったら、珠理の顔が耳元まで近づいてきた。
接近しすぎた距離に、ギュッと目を閉じて下を向く。
「…なに想像してんだよ?」
2秒後に、耳元に落ちてくる低い声。
その声に、思わず涙が出てきそうになった。もう、息をするのも、しんどい。
「…そ…んなの、してない!ばか!」
珠理を、力いっぱい引き離す。なんてこと言うんだって怒りたかったけれど、いつまでも耳に残っている声を思い出しては、そんなことを言っている余裕もなく。
どきどきと動く心臓を落ち着かせるので、精一杯だ。
「ふふふ、ごめんごめん。めごが可愛い顔するから、思わず」
わたしが離れると、珠理は少し困ったように笑いながら、またわたしの頭を優しく撫でる。
「…っ、そんな顔してない…」
「してる。言ったでしょ、めごはいつも可愛いって」
「…!」
…だめだ。早く教室を出よう。
このオネェと2人きりでいたら、心臓がいくつあっても足りないよ。
「か…、帰るっ…」
「ええ、帰るのー?じゃあアタシも一緒に帰る〜♩」
「いいっ!ついてこないで!ばか珠理!」
このオネェ、本気を出してきたら、飲み込まれてしまいそうなくらい、甘ったるい。