ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…珠理」


近海くんに言われた通り、二階にある近海くんの部屋に行くと、珠理はベランダでスマホを触っていた。

カーテンが開いていたから、その様子がすぐに分かる。


「珠理」


もう一度名前を呼んで、そのドアに手をかけると、その音で気がついたらしい珠理は、わたしの方を向いた。


「…ただいま。こんなところにいたら、風邪ひくよ」

「…めご」


寒いけど、冷たくて心地いい風がそよそよと吹いている夜。ベランダに背中を預けている珠理は、わたしの方を見たら、そのまま少しだけ目を逸らしていた。


—— “大丈夫無事だったよって、言ってきてあげてよ”


「…」


さっき、近海くんはこんなことを言っていたけれど、本当なんだろうか。
珠理はいつも余裕だから、ちょっとやそっとじゃ、拗ねたりなんかしないと思っていたんだけど。


「…ごめんね、遅れちゃって。買い物もみんなに任せてしまって」

でも、珠理がそこから動こうとしないから、わたしも一緒に、ベランダに出た。


「…別に、いいわよ。アタシは、あの子たちについていっただけだから」

「…」

…でも、たしかに、いつもに比べて口数は少なくなっているような気がする。おふざけもない。テンションも、いつものように高いわけではない。

妙な心配、かけちゃったかな。

そりゃ、そうだよね。今まで散々、リョウちゃんのことで助けてくれていたのに、また再会した時には、みんなよりも元カレ優先して話にいっちゃうんだもん。


心配されるのも、怒るのも、分かる。



「…珠理」

「…なあに?」

「……、もしかして…心配かけてしまったりしていたら…、ごめんなさい…」


…日本語が、おかしくなってしまった。語尾も、力なくヘニョヘニョと、小さく消えていってしまう。

でも、心配かけてしまったとしたら、謝らなきゃいけないと思った。今まで、泣いていたわたしを見てきた、この人には。


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