ヒミツにふれて、ふれさせて。
珠理からの返事はすぐには返ってこなかったけれど、しばらくシンとした空気がわたしたちを囲んだあと、そのきれいな唇は静かに動き出した。
「…なかなか合流しないから、心配したわよ」
この人にしては、重い、ズシリとしたその声は、わたしの心に響いていく。
「…うん、ごめんなさい。ちょっと、リョウちゃんとお話することがあって」
「…」
あとは、珠理の誕生日プレゼントを選びに行っていたからだったんだけど…。
「…」
しばらく、なんとなく気まずい空気が漂っていた。珠理は怒っているのか何なのか分からない表情をしていて、気持ちを掴むことができなくて、戸惑ってしまう。
思わず下を向いて、手のひらをぎゅっと握ってしまうわたしを、珠理はジッと見ていたけれど、わたしと向かい合った状態で、口を開いた。
「…何も、されなかった?」
——…いつのことを、思い出しているのだろうか。
珠理の指先は、わたしの頰に触れて、親指で静かにその周りをなぞる。
「話しただけ?ほんとに、何もない?」
声を少しだけ震わせて、下を向いて、少しだけ悲しそうな、不安そうな顔で、わたしの頰を撫でる。
わたしは、なんとなくその顔を見て、鼻の頭がツンと熱くなった。そして、その不安そうな指先を、慌てて掴む。
「何も、されてないよ。ただ会って、話しただけ。わたしの忘れ物があったからって、お話しただけ。ほんとに、何もされてないから大丈夫だよ」
「—…」
ぼーっと、わたしの頰を撫でながら、どこを見つめているのだろう。
珠理は、少しだけ頰から指を話すと、添えられていたわたしの手を取って、ぎゅっと握った。
…そして、わたしの方を向いて、しっかりと目を合わせる。
わたしをジッと見つめていたその目は、やっぱり、いつもよりも強い不安を抱いているように見えた。
きゅっと結ばれた整った唇は、少しだけ震えて、言葉を繋いでいく。