ヒミツにふれて、ふれさせて。
そっと離れて、コツンとおでこをぶつけられる。
いつもと違って、大人しくわたしの方を向いている珠理は、少しだけ顔を赤くしていて。
嬉しそうな、でも恥ずかしそうな、なんとも言えない顔で、わたしを見つめている。
…外では、静かに乗り物が通る音だけが響いていた。
真っ暗なこの空間、わたしたちがいるこの空間だけが、ゆっくりと時間が過ぎていっているような気がした。
「…あのね、珠理」
「うん?」
静かな、冬の空気に、わたしたちだけの声が響く。
「…わたしね、リョウちゃんと今日話したけど、ものすごく普通に話せたんだよ」
「…」
「本当に、普通だったの。色々あったけど、今はリョウちゃんも元気そうだったから、良かったって素直に思えたの。会ったら泣いちゃうのかなって心のどこかでは思ってたんだけど、そうじゃなかった」
…そう思えたのは、きっと、珠理がいたから。心からそう感じているのは、もう自分でも気づいている。
珠理への気持ちが、特別なものなのかそうじゃないのか、よく分からない。でも、そのよく分からない気持ちの中にも、きっと珠理がいたから乗り越えられたことはあるから。
…だから、嬉しかった。
リョウちゃんのこと、ちゃんと前に進めているんだって分かって、嬉しかった。
そう、思えたのは、きっと。
「…そのくらい、珠理がいっぱい、いっぱいわたしのために、色々なことを、考えてくれてたからだね」
…それに、尽きると思う。
珠理がいたから、わたしは一歩前に踏み出せた。
寂しいなんて思う暇ないくらい、わたしを、楽しませてくれたから。