ヒミツにふれて、ふれさせて。


もう一度、ぐっと涙を拭いた。メイクが流れてしまってるとか、もうそんなの考える余裕もなかった。

鏡を取り出して、悲惨なことになっていないかだけを確認して、もう一度、乾いた喉を潤すために、お水を飲む。

冷たいそれは、たくさん運動していた喉に、気持ちよく染み渡る。



「……瀬名」

「うん?」

「…残りの、栗のタルト、瀬名が食べちゃって大丈夫!」

「……」


最後の最後に食べようと思っていた、大きな栗が残っているけれど。それでも、もうそんなの、食べている場合じゃない。

思ったらすぐに行動しないと、なんだか身体がそわそわして、気持ちわるいんだ。



「ははは…っ、やったあ。じゃあこれはゆっくり食べさせてもらうね」



瀬名は、満面の笑みで、そう言ってくれた。



「…これから、行くの?暗いよ」

「大丈夫。前に行った時もこれくらいだったから」

「そっか。ひとりで、大丈夫なの?近海くんにも、一応伝えておく?」



心配性な瀬名が、おろおろしている。ひとりで行くの、心配しているんだよね。でも、そーいうところも、だいすきだよ。



「大丈夫。今度はわたしから、ちゃんと…珠理と向き合いたいから」

「……」



初めてちゃんと、自分の言葉で親友に伝えられたと思う。

珠理の名前を出すのは、どうも慣れない。最初は、文句しか言っていなかったからかな。


でも今は、くすぐったい想いが込み上げてきて、また頰が熱くなった。
もうそれは、確かにわたしの心の中に生まれてしまったものだから、誤魔化すことはできない。

誤魔化す理由だってない。



「…瀬名、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい。きっと大丈夫、うまくいくよ」

「…うん」

「泣かされたら、また戻っておいで」

「はははっ、 わかった…!」



ちゃんと、親友が待っていてくれるって、ものすごく心強いんだなあって、改めて感じることができたよ。


「瀬名、行ってきます…!」


ガタン、と、椅子を降りて。隣に置いてあったカバンを持った。

ひらひらと手を振りながら、陽だまりのような笑顔を向けてくれている瀬名に背中を向けて、


わたしは、珠理がいる、ハニーブロッサムへ走ることにしたんだ。






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