副社長のいきなり求婚宣言!?
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 それから月を跨いだ頃には、深まっていた秋の風はもうだいぶ冬の匂いを纏わせるようになってきた。

 毎日が本当に夢のような時間を過ごしていたのではないかと思う。

 仕事が終わるたびにこっそりと副社長室に向かい、宿題を見てもらう。

 きっと普通に生活していたら、絶対にかかわることのなかったであろう副社長様との、結婚を見据えた恋人ごっこ。


 そんなひと月の間に、デザイン画は何枚くらい描いただろう。

 スケッチブックも三冊目を買ったところで、二つのデザインを併せてみるとどうなるかという副社長の発案で、この週末に最終的なアイディアをまとめたものを描き上げた。

 私としても、何度もブラッシュアップを図ったデザインは、これまでに描いてきたもののどれよりも満足のいく出来に仕上がっていると思う。


 早く副社長に見てもらいたいと焦る心は、一日の業務をこれでもかともったいぶったように長く感じさせた。
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