副社長のいきなり求婚宣言!?
 かつて、その自信に溢れた声音で何度も私に甘く囁いてくれていた人は、赤い夕陽を背に表情に影を作り、口の端を吊り上げて嫌みったらしく笑う。


「おかげさまで、人手不足の結果、仕事取れなくなって潰しちゃったよ、オレの夢の結晶」


 まるで、私が辞めたから会社を潰してしまったと言わんばかりの言い種。

 あのとき心が壊れそうなほど傷つけられた私のことなんて、これっぽっちも気にならないんだろう。


「大変、でしたね……」

「ああほんとになあ!!」


 たくさんのトゲで突かれる心が、とても痛くて苦しい。

 少しでも落ち着いてもらえればと掠れ声に込めた慰みの気持ちは、苛立ちを含めた大きな溜め息にかき消された。
< 70 / 104 >

この作品をシェア

pagetop