副社長のいきなり求婚宣言!?
「なんでオレが下っ端みたいに、客にヘコヘコして足蹴にされなきゃいけねーんだよ」


　乱暴に自販機のボタンを押す亮介さんに、びくっと肩がすくむ。

　ストレスを感じ始めると、粗暴になる亮介さんの性格は変わっていない。

　むしろ、雇われているという現状とおそらく仕事が上手くいっていないであろうことが、特に彼を苛立たせているようだ。

　それに……亮介さんは、私がここでまだ設計やデザインの仕事をしていると思っている。

　自分の会社を捨てた元アシスタントの私が、一流企業で働いてるとなれば、亮介さんが良く思わないのも仕方のないことだ。


　でも、現実は違う。

　私はもう、画を描きたいという気持ちが壊れて、この会社では雑務をしていた。

　あんなに夢に溢れていたのに、設計にはほとんどかかわることのない総務部庶務課で細々と事務作業に明け暮れているところだったんだ。


　……副社長が、私を見つけてくれるまでは。
< 71 / 104 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop