副社長のいきなり求婚宣言!?
 ――“ここに立つと全部を支配している気分になれる”


 あれは、実際に人の上に立っている人が言う台詞じゃなかったもの。

 あくまでも、自分も人のために働いているうちの一人、そういう謙遜した気持ちで言われたから、嫌悪を抱かなかった。

 副社長の言葉は、皆の幸せのために、という後ろ盾があるから、とても純粋な夢のある言葉に聞こえたんだ。

 
 飼われてるつもりなんてない。

 私は、副社長の夢に寄り添いたくて、その力になりたくて……私自身が描きたいと思って描いているんだから。


「大方ここのイケメン副社長殿にでも媚び売ってるんだろ。女はみんなあの手の男に気に入られたがるもんな」

「俺が気に入ったから手元に置いてるんだが?」


 遠慮なくぶつけられる嫌味を遮ったのは、頭の中で手繰り寄せていた低すぎない落ち着いた声。

 私の後ろへ視線を送る亮介さんの見開いた瞳を辿るように、その声の主へと振り返った。
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