副社長のいきなり求婚宣言!?

 誰も居ない夕闇に沈みゆく廊下。

 二人の足音がカーペットに吸われていく。

 エレベーターの前に並んで立つと、そこで待っていたかのように扉はすぐに開かれた。


 今がひと気のない時間でよかった。

 副社長様と何ら関わり合いなんてないはずの庶務課の人間が、一緒にいるだけで副社長までもが変な目で見られかねなかった。
 

 ―-“社員の誰にもバレないようにしろよ?”


 最初に言われた言葉が、今初めて危険を感じさせる。

 あ、でも……亮介さんには、変に思われたかもしれない。


 ――“俺が気に入ったから手元に置いてるんだが?”

 ――“誰かれ構わずじゃないぞ?”


 あんな、私がさも特別であるかのような言い方をして……

 これで私が、コンペで入賞したりしたら、変な噂が立ってしまうかもしれないのに。
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