副社長のいきなり求婚宣言!?
 特別なように聞こえたのは、私が一瞬でものぼせ上がってしまったからだ。

 嫌味を言われている私を、副社長は救ってくれただけなのに。

 心が一線を飛び越えてしまいそうになっているところをかろうじて引き止める。


 でも安心したのは本当だった。

 あのまま鋭利な言葉で刺され続けてたら、せっかく取り戻した勘を失ってしまいそうだったから……

 だから、ほっとした。

 ほっとしたから、……涙が溢れてくるんだ。


 エレベーターに乗り込むなり、副社長はボタンを長い指で弾き、最奥に私を追い詰める。

 上昇していく箱の冷たい壁に背中を預け、副社長は私を囲うように手をついた。


「リハビリ中のくせに、何傷えぐられてんだよ」


 私を責めるかのような言い草に聞こえるけれど、それのどこにも棘なんて見当たらなくて。

 その証拠に、私の涙を拭ってくれる長い指は、とても温かい。


「あんなクズのために涙なんて流すな、もったいない」
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