副社長のいきなり求婚宣言!?
 私の心なんてすぐに見抜く副社長らしからぬ、的外れなお叱り。

 濡れた長い指を見つめて、小さく頭を振った。


「ふ、副社長、が……」

「俺が何」


 まさか、副社長が来てくれてほっとしたから泣いてるなんて言えない。

 何のために私を助けてくれて、どうしてあんな言い方をしたのか知りたいなんて言えるわけない。


 目元に溜まった涙で、見上げる副社長の顔が滲む。

 溢れそうになっているのは、涙ではなく……私の心だ。


「なんだよ」


 今口を開くと、気持ちが零れてしまいそうだ。

 ……副社長のことが、好きって気持ちが。


 そして途端に欲張りになる。

 私に対する気持ちに、特別なものを持ってもらいたい。

 誰にも触れさせるつもりがないなら、ずっとそばにいてほしい。

 私を身請けした理由に、“好き”を添えてほしい。
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