副社長のいきなり求婚宣言!?
 無理矢理上を向かされて、目に溜まってた涙がいっこだけぽろりと転げ落ちる。


「あいつのこと、まだ好きだったのか?」


 またしても的外れな推測に、きょとんと瞬く。


「あいつと、ヨリ、戻そうとでもしてたのか?」

「え……?」

「邪魔したか? 俺は」


 とても苦しそうな瞳が私を覗き込む。

 私の影を映すそこから、しとしとと切ない気持ちが降ってくる。

 さっき見た綺麗さはそこに燻っているのに、どうしてそんな表情しているんですか?


「私は、嬉しかったですよ? とても。……副社長が助けに来てくださって」


 震える口唇で、切なさを降らせる瞳を慰める。


「怖かったんです、凄く……。

 せっかく癒えかけた心が、またあの時の気持ちを思い出しちゃって……

 なんのために描いていたのかって、あの頃の何にもならない自己満足の思いなんて、全部無駄なものだったから……

 今は誰のために何のために描いてるのかって考えてたら……もしかしたら、また、描けなくなるときが来るんじゃないかって思って……」
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