あなたと同居なんてありえません!
でも、考えなくちゃいけないんだよね。
「玲、あなたはどう思う?」
香澄さんは隣に座っている七瀬玲に話しかけた。
スマホをいじっていた玲は顔を上げて、ニンマリと笑った。
「俺はいいよ。 慧さんいい人だし」
七瀬玲に褒められたお父さんは、目尻を下げて、優しい顔でありがとうと言った。
これから息子になる予定の七瀬玲に褒められたから、嬉しいんだろうな……。
「これから一緒に住むことも、いいのね?」
「うん」
そう言うと、七瀬玲はまたスマホをいじり始めた。
女の子と会話してるのだろうか。
……嫌だなぁ、本当。 この人と一緒に住む、家族になるなんて。
「陽葵はどうだ?」
なんて、みんなの前で言える勇気なんてない。
こんな嬉しそうな顔でお父さんに言われたら、嫌なんて言えないし……!
私が我慢すればいい話。 なるべく話をしないようにしよう。
「……トテモイイと思います」
少し、カタコトになっちゃったけど、大丈夫かな。
「ありがとう、陽葵」
あぁ、本当に好きなんだ、香澄さんのこと。
いつもの笑顔じゃなくて、きっとこれは、愛しいものをみるときの目だ。
香澄さんも、お父さんも、本当に愛し合っているんだな……。
私たちの入る隙間なんてないくらいに。
「陽葵ちゃん、よろしくね」
「はいっ、こちらこそ」