ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
その後ナツメは、食事を終え、「じゃあ天野さん、またね」と頭を下げ、眠い眠いとあくびをしながら部屋に戻ってしまった。
「じゃあ俺も帰るよ。いろいろありがとう」
声が弾んでいる。
落ち込み気味の葵とは違い、蒼佑はかなりご機嫌だった。
「これで、ナツメくんに隠さなくてよくなるじゃないか」
そんなことを言いながら玄関へと向かう蒼佑に、葵は首を振る。
「いや、隠さなくていいもなにも……私が知られたくなかったのは、過去のことだもの」
もちろんいま現在だって、恋人と思われるのは不本意でもあるのだが。
「――昔のことは話さないつもりなのか?」
蒼佑がおや、という顔をして振り返った。
「ええ。だって知らなくていいことだし」
葵は靴を履く蒼佑を見詰めながら、深くうなずく。
「それに、ナツメが昔の私たちのことを知ったら、あなた、嫌われるんじゃない?」
過去から蒼佑が抱えている後悔の思いは抜きにして、少し意地悪のつもりで言ったのだが、それを聞いて蒼佑はかすかに目を細め、意味深な笑顔を浮かべた。