ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 葵が知る中では、最高の色男と言えるかもしれない。

「あ、恐れ入ります。葵さん、どうぞ」

 隣にいた大内が、代わりに水が入った紙コップを受け取った。
 だが差し出される水を、葵は受け取れなかった。

 ただ、目の前に立っている上等な男を見あげているだけだ。
 そして葵と同じように、また蒼佑も無言で、ただ目の前にいる葵をじっと見つめ、固まっている。

「あれ……?」

 そんなふたりを見て、大内が不思議そうに顔を見比べたが、先に動いたのは葵だった。

「お久しぶりですね」

 あんなに動揺していたのが嘘みたいに、頭が冴え冴えとしていた。

 声も涼しく、動揺一つ見せなかった。

 それからにっこりと笑うと、蒼佑が大きく息を飲む気配がした。

「どう、して」
「どうしてもなにも……私が生きててビックリした?」
「そうじゃない……!」

 そして蒼佑は、黒髪の中に指を入れる。
 タダならぬものを感じたらしい。ふたりの間に立っていた大内の表情が、すっと変わった。


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