ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「痛い?」
ナツメは注射のたぐいが大嫌いなのだ。
小さい頃は、予防注射が嫌で大泣きするナツメを、抱っこしていたことをふと思い出して、葵はふっと笑う。
「これはただの点滴だから。腕に入らないから、ここに入れられてるだけで」
「体は?」
「二、三日寝てたら痛みも引くだろうって」
階段から転がり落ちて頭を打ったのに、検査の結果は問題なしだった。
階段が緩やかだったのが、よかったのかもしれない。全身の打ち身だけで済んだのは、幸運だった。
「天野さんがいてくれるから、安心だけど……なにかあったらちゃんとすぐに言ってよね」
すでに蒼佑とナツメの間で、話は進んでいるらしい。
蒼佑の世話になるのは不本意だが、それでナツメが安心してくれるのなら、それはそれだ。
「うん。心配しないで。さ、大内さん、待ってるんでしょう」
葵は優しくうなずいて、励ますように弟の手を叩いて、見送ったのだった。