ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そして退院の当日。蒼佑は十時ぴったりに、いつものスーツ姿ではなく私服で姿を現した。
「車椅子を借りてきたから、これに乗って」
「えっ……確かにまだ痛いけど、歩けるから。乗らない」
お世話になった看護師たちに挨拶をしたあと、頭からすっぽりかぶれるタイプのワンピースに着替えて蒼佑を待っていた葵は、首を振ってそれを拒否した。
別に骨に異常はないのだから、なるべく普通にしていたい。
「だめだ。歩くなんて問題外だ」
だが蒼佑は葵の拒否をあっさり却下すると、問答無用に、ベッドに腰を下ろしていた葵の膝裏に手を入れて、軽々とお姫様抱っこしてしまったのだ。
「きゃっ……!」
思わず悲鳴をあげる葵だが、蒼佑は「じゃあ行こう」と、葵をそのまま車いすに軽々運んで座らせると、葵の荷物を肩にかけ、さっさと車椅子を押してエレベーターへと向かう。
今日の蒼佑は、ストライプ柄のボタンダウンシャツに、黒のスキニーパンツ。そして白いスニーカーという清潔感のある格好で、髪はラフに洗いざらしだ。
病院の中であっても、見た目がいいためやたら注目を浴びているが、まったく本人は気にしていない。