ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
だが、子供のように泣いたせいだろうか……急に眠気が押し寄せてきた。
ウトウトしながら、葵は目を閉じる。
(風も気持ちいいし……寝ちゃおう……)
おそらくうたた寝したのは、ほんの一時間程度だったはずだ。
周囲にほのかに甘い匂いが漂っているような気がして、葵はまぶたを持ち上げた。
「ん……」
しばらくぼーっと、ソファーに横たわったまま開け放った庭を見詰めていたのだが、やはり勘違いではない。間違いなく、甘いいい匂いがする。
むくっと体を起こして、用心しながら、匂いの元へと向かい、仰天した。
なんと、台所で蒼佑がクッキーを焼いているではないか。すでにテーブルには焼き上がったクッキーもある。だが蒼佑は、まさか見られるとは思っていなかったようだ。型抜きを持ったまま固まってしまった。
「あなたが焼いたの?」
蒼佑はテーブルの上のケーキクーラーと葵の顔を見比べて、がっくりと肩を落とした。見られたくなかったのかもしれない。
「ああ。これで君の機嫌を取ろうと思って……」