ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 だが、子供のように泣いたせいだろうか……急に眠気が押し寄せてきた。
 ウトウトしながら、葵は目を閉じる。

(風も気持ちいいし……寝ちゃおう……)



 おそらくうたた寝したのは、ほんの一時間程度だったはずだ。
 周囲にほのかに甘い匂いが漂っているような気がして、葵はまぶたを持ち上げた。

「ん……」

 しばらくぼーっと、ソファーに横たわったまま開け放った庭を見詰めていたのだが、やはり勘違いではない。間違いなく、甘いいい匂いがする。

 むくっと体を起こして、用心しながら、匂いの元へと向かい、仰天した。

 なんと、台所で蒼佑がクッキーを焼いているではないか。すでにテーブルには焼き上がったクッキーもある。だが蒼佑は、まさか見られるとは思っていなかったようだ。型抜きを持ったまま固まってしまった。

「あなたが焼いたの?」

 蒼佑はテーブルの上のケーキクーラーと葵の顔を見比べて、がっくりと肩を落とした。見られたくなかったのかもしれない。

「ああ。これで君の機嫌を取ろうと思って……」
< 199 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop