ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
蒼佑が、リハビリがてら外に出るなというのも仕方ないくらい、家から出なくても困らないよう、すべてが揃っているのだ。
(なっちゃん、なに食べたいかな……やっぱりお肉かな)
レシピを検索していて、ふと手が止まる。
今朝、蒼佑のもとに弁護士の神尾から連絡があった。結局、葵を突き飛ばした例の女性が、逮捕されるだろうという話だ。ナツメのもとに送っていた脅迫状の件も、いずれ立件されるらしい。
一時はどうなることかと不安だったが、これでまた、今まで通りの生活が送れるはずだ。
(今まで通りの生活か……)
来週の半ばから、朝は少しばかり寝坊しながら、ナツメの作ったごはんを食べて、南天百貨店の売り場に立ち、スーツを売る。蒼佑は上客のふりをしてやってくるだろう。
そうやって少しずつ蒼佑との時間を増やして――。
(その先は、どうなるの?)
自分と蒼佑は、元婚約者同士だ。
だが八年も前に婚約は破棄されて、今は他人同然。
蒼佑はHFの御曹司で、自分は何者でもない、“ただの人”だ。
(私はなにも、もってない……)