ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 蒼佑の手が無言で背中と頭の後ろに回る。
 長い髪の中に指が差し込まれて、ふわふわと髪が空気を孕みながら、広がってゆく。

 葵も応えるように、蒼佑の背中に腕を回した。

 それは、今まで何度かかわしたような、強引なキスではなく、お互いの存在をおそるおそる確かめ合うような、そんな優しいキスだった。

「――心臓が壊れそうだ」

 そう言ったのは蒼佑で、葵ではなかった。

「大げさね」

 と葵が笑うと、蒼佑は葵の手をとり、自分の胸に上に乗せる。

「そう思う? 誇張はしてないが」

 どうやら触れて、確認してみろと言いたいらしい。

「待って。ちゃんと確かめるから」

 葵はそのまま顔を傾けて、右の耳を蒼佑の心臓のあたりに押し付ける。
 すると、彼の逞しい胸の奥から、ドクン、ドクンと大きな鼓動の音がした。

「あ、本当だ」

 頬をくっつけたまま笑うと、頭上から「はぁ……」と吐息が漏れる。
< 243 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop