ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「――食事、口に合わない?」
「えっ……!? ううん、美味しい、すっごく!」
部屋のテーブルの向こうに座る、浴衣姿の蒼佑にそう尋ねられて、葵は自分の箸が停まっていることに気が付いた。
慌ててお造りを口の中にいれて、もぐもぐと咀嚼する。
「箸休めに出てきた雲丹豆腐も、びっくりするほど美味しかったし、この、伊勢エビのお造りだって、あまくて弾力があるのに、とろっとして……」
時刻は七時過ぎ――。三十分ほど前から、夕食の時間は始まった。目の前にならべられた、美しい、贅をつくした懐石料理には見惚れるばかりだったが、確かに箸はあまり進んでいないように見えたかもしれない。
「ちょっと、長湯しすぎただけよ」
葵の言葉に、蒼佑はクスッと笑う。
「そうだな。君、一時間以上入ってただろ」
「う、うん……気が付いたらそのくらい経ってて……」
いろんなことで、頭がいっぱいいっぱいだったのだ。
葵は、恥ずかしくなりながらうなずく。